市民参加で進む研究の現場へ!#2|根粒菌大調査(東北大学 Cool Earthラボ)

前回の「市民参加で進む研究の現場へ!#1」では、東北大学・Cool Earthラボの「地球冷却微生物を探せ」をご紹介しました。今回は、同じCool Earthラボが運営するもうひとつのプロジェクト「根粒菌大調査」の研究現場をレポートします。引き続き、大久保智司特任助教にご案内いただきました。

「根粒菌大調査」とは?

大豆の根にできる「根粒」の中には窒素を固定して大豆の成長を助ける根粒菌が住んでいますが、この根粒が温室効果ガスであるN₂O(一酸化二窒素)の発生源にもなり、大豆がN₂Oの意外な発生源であることがわかってきています。
東北大学 Cool Earthラボでは、N₂Oを大きく減らす力を持つ特別な根粒菌(Bradyrhizobium ottawaense SG09、以下SG09)を発見し、農地で使う微生物資材の開発を進めています。しかしこれには課題があります。土の中にもともといる「土着根粒菌」との競争に負けてしまうと、SG09のN₂O削減効果が十分に発揮されないのです。どんな農地なら効果が出やすいのか——その答えを探るのが「根粒菌大調査」です。

「地球冷却微生物を探せ」が全国の土からN₂Oを減らす能力を持つ微生物を幅広く探索するのに対し、「根粒菌大調査」は農地での社会実装を見据えた調査を担います。LEVEL 1(栽培履歴の記録+土の採取)から始められ、大豆を栽培できる方はLEVEL 2(根粒菌の接種実験)まで挑戦できます。

プロジェクト参加にはLEVEL1(緑色)とLEVEL2(黄色)がある。(根粒菌大調査資料より)

キットの中身——資材AとBで探る根粒菌の可能性

LEVEL1では、参加者の畑の栽培履歴と土を採って送ることで、分析結果として土着根粒菌数が返されます。自分の畑の特性を知ることができると同時に、そのデータが農業と地球環境の未来につながる研究を支えます。

さらにLEVEL2では、根粒菌の接種実験まで行います。今回伺った研究現場である東北大学では、特にLEVEL2参加者に送られる実験キットについて詳しくご説明いただきました。まずは、主役の根粒菌。培養したSG09や他の根粒菌を、無菌化したピートモス(植物性の用土)に染み込ませ、資材AとBとします。
資材Aには、N₂O消去能力が高いSG09の1株のみが入っています。一方の資材Bは、SG09を含む約148株の根粒菌を混合したものです。

LEVEL2の参加者は、送られてきたこのAまたはBを大豆の種子に付着させ、自分の畑にまきます。約30〜50日後に育った大豆の根を引き抜いて研究室へ送り返すと、研究室ではDNA解析を行い、「どの根粒がSG09(または他の菌)のものか」を調べます。資材Aの結果からはSG09がその畑に定着できたかどうかが、資材Bの結果からはどの株が競争を勝ち抜いたかが明らかになります。このデータの積み上げが、「どんな畑に、どんな菌が効くのか」というデータになっていきます。なお、2026年度の調査では、これまでの知見を踏まえてSG09の接種(資材A)に絞って実施される予定です。

農家さんと一緒につくるデータ

「根粒菌大調査」の参加者は農家さんが中心で、農業系の学校や家庭菜園の方も参加されています。なかでも研究チームが特に参加を呼びかけたいのは北海道の農家さんです。日本の大豆生産の半分以上を占める北海道の農地データは、研究にとって欠かせない情報です。
「試験圃場でのデータと、実際の農地のデータは違うことがある。だからこそ、現場の農家さんの畑で実験することに意味があるんです」と大久保特任助教。市民の参加が単なる「サンプル収集の手伝い」ではなく、試験圃場では得られないリアルなデータの収集そのものであることが伝わります。

大豆を育てられる農地をお持ちの方は、ぜひ「根粒菌大調査」への参加をご検討ください。あなたの畑のデータが、農業と地球環境の未来を変える一歩になるかもしれません。プロジェクトへの参加はこちらから!

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