市民参加で進む研究の現場へ!#1|地球冷却微生物を探せ(東北大学 Cool Earthラボ)
CoLabField運営事務局が、掲載中のシチズンサイエンスプロジェクト「地球冷却微生物を探せ」を運営する東北大学・Cool Earthラボの研究室を訪問しました。市民の皆さんが送ってくれた土と気体のサンプルが、実際の研究現場でどのように受け取られ、分析・保管されているのかをレポートします。案内してくださったのは、東北大学大学院生命科学研究科の大久保智司特任助教です。

「地球冷却微生物を探せ」は、温室効果ガスのひとつであるN₂O(一酸化二窒素)を土壌中で分解・吸収できる微生物を、市民の皆さんと一緒に探し出すプロジェクト。参加者がひとすくいの土と瓶内の気体を採取して研究室へ送ると、研究者がその土が「N₂Oを出す土」か「吸う土」かを調べ、さらに土の中にいる微生物をDNAから解析します。全国各地の多様な土が集まることで、日本の土壌と微生物の関係を網羅的に明らかにする、壮大な地図づくりでもあります。
サンプルの行方①:3,000件超のサンプルを冷蔵庫に保管
研究室を訪ねてまず驚くのは、冷蔵保存された土サンプルの多さです。これまでに全国の参加者から届いたサンプルはなんと3,000件以上。届いた土は今後の研究に用いるために丁寧に冷蔵管理されています。
一方、参加者へのキット発送も毎週欠かせない作業。スタッフや学生アルバイトさんと協力して、週に1回のペースで梱包・発送を行っています。「誰にどのキットを送るかを間違えるわけにはいかないので、確認作業がとても大変です」と大久保特任助教。3,000件という数の裏には、こうした丁寧な日々の作業が積み重なっています。
サンプルの行方②:気体はガスクロで一気に分析
参加者の皆さまから届いた気体と土のサンプルのうち気体サンプルは、ガスクロマトグラフ(通称ガスクロ)による分析機器にかけられます。土の瓶から得られた気体を測定し、N₂Oをはじめとする温室効果ガスの濃度を調べる装置です。一度に最大60本・600分の連続分析が可能なため、大量のサンプルを効率よく処理することができます。
さらに25年度からは、新型の「温室効果ガスアナライザー」も導入されました。この機器では、1つのサンプルからN₂O・CO₂・メタンの3成分を同時に測定することができます。3つの主要な温室効果ガスをまとめて解析できるようになったことで、それぞれの土が地球温暖化にどう関わっているかを、より詳しく読み解けるようになりました。
温室効果ガスアナライザー:3成分を同時に測定可能!
ガスクロ:一度に60本の気体サンプルを分析可能!
サンプルの行方③:土はメタゲノム解析で「住人」を丸ごと解読
気体サンプルの分析と並行して進むのが、土サンプルのメタゲノム解析です。土の中に含まれるすべての微生物の存在をDNAにより一括で読み取るこの手法は、隣接する共同研究ラボと連携しながら、DNA抽出から配列解析までを学内で進めています。
どんな気体の変化が見られる土には、どんな微生物が多く存在するのか。その関係を知る基礎となる情報をメタゲノム解析で網羅的に調べます。このように、参加した市民の皆さんから届いた膨大なサンプルから、日本全国の土壌と微生物の関係性を示すデータが積み上がっていきます。
解析で使用する冷凍の土サンプル
運営の視点:「参加者に楽しいと思ってもらう」ことを常に考える
大久保特任助教がプロジェクト運営で常に意識していることを伺うと、こんな答えが返ってきました。「参加者に楽しいと思ってもらえる工夫を、いつも考えています」。科学的な成果を積み上げるだけでなく、参加者一人ひとりの体験を大切にするこの姿勢が、3,000件を超えるサンプル数という形で表れているのでしょう。
さらに、CoLabFieldへの期待についても聞かせていただきました。「参加者への窓口としての役割はもちろんですが、プロジェクト同士のつながりも面白いと思っています。CoLabField上の複数プロジェクトが共同でサンプリングを行うことで、参加者の皆さんの楽しさをもっと広げられるのではないかと期待しています。」
市民の一握りの土が、研究者の手で地球の未来を変える手がかりに変わっていく——そんな可能性に満ちた研究を、ぜひ皆さんにも実感していただければと思います。
「地球冷却微生物を探せ」への参加は、こちらから!
なお、同じCool Earthラボが運営するもうひとつのプロジェクト「根粒菌大調査」については、次回の「市民参加で進む研究の現場へ!#2」でご紹介します。「地球冷却微生物を探せ」が全国の多様な土から生物資源を探索するのに対し、「根粒菌大調査」は農地での社会実装を見据えた調査を担っており、ふたつのプロジェクトは車の両輪のように連携しています。どうぞお楽しみに!




